顧客ファーストの福祉イノベーション
- harunakawakami
- 8月26日
- 読了時間: 8分
FMうるま「OKINAWA FUTURE INNOVATION」 2025年8月26日(火)の放送は「顧客ファーストの福祉イノベーション」について、合同会社Walkers Base(ウオーカーズベース)代表社員福祉用具プランナー研究ネットワーク/沖縄地区会世話人 仲宗根 千晶さんをお招きしてディスカッションしました。

テーマ:Walkers Baseについて
MC久高「『Walkers Base 代表社員』で『福祉用具プランナー研究ネットワーク沖縄地区会世話人』と、色々なことをされている印象ですが、まずWalkers Baseではどのような事業をされているのですか?」
仲宗根さん「メインの事業は、介護保険を利用した福祉用具のレンタルです。」
MC久高「福祉用具というと、どのようなものがありますか?」
仲宗根さん「車椅子やベッド、杖など多岐にわたります。介護保険でレンタルできるものもあれば、医療機器の取り扱いも少し行っています。私たち福祉用具の事業所には、『福祉用具専門相談員』という資格を持つ職員がいます。その上位資格として『福祉用具プランナー』という資格がありまして、その資格を持つ人たちが全国にいるのですが、私はその沖縄の会の世話人をさせていただいています。」
MC久高「プランナーでもあるんですね。頼もしさが伝わってきます。しかも千晶さんは、沖縄が誇るギネス記録保持者、JJさんのお姉さんなんですよね。」
仲宗根さん「はい、いつでもどんな状況でもバスケットボールを回せる、JJの姉です!(笑)」
MC久高「JJさんも沖縄の宝ですよね。そんな千晶さんが立ち上げた『Walkers Base』という社名には、どんな由来があるんですか?」
仲宗根さん「会社を作るとき、父のことを思い浮かべました。父は、仕事やお金がない時でも、少しずつでもコツコツと自分のできることをずっと続けていた人でした。 だから、会社を作るなら、父のように亀が歩むくらいゆっくりでも、着実に前進する人たちが集まる『基地』にしたいと思ったんです。『前進する人』を英語で何て言うか分からなくて、造語で『Walkers』と付けたんですが、『歩行者天国みたいだね』と言われてしまって(笑)。でもそれが由来です!」
MC久高「素敵な意味が込められていたんですね。このお仕事を立ち上げたきっかけは何だったのですか?」
仲宗根さん「以前勤めていた会社の経営が大きく転換する時期があって、社長から『仲宗根さんたちは今後どうするの?』と聞かれた時、思わず『社長、独立していいですか?』という言葉が口から出たんです。言った後に、『あ、私、独立してでも福祉用具の仕事をやりたいんだ』と気づきました。そこから1ヶ月半くらいでバタバタと会社を作りました。」
MC久高「もともとはどんなお仕事を?」
仲宗根さん「実は観光業が多かったです。ホテルやプールの監視員もやっていました。泳げないんですけど(笑)。」
MC久高「全く違う道から福祉の世界に入ったきっかけは?」
仲宗根さん「接客業が楽しいなと思っていた時に、高齢の方や障がいのある方を少しお手伝いする機会があったんです。その時、『福祉って、究極の接客業なんじゃないか?』と思って。そこから専門性を求めたいと思い、デイサービスで働いた後、福祉用具の仕事にたどり着き、気づいたら福祉用具屋さんになっていました。」
テーマ:福祉用具プランナーについて
MC久高「福祉用具プランナーの力は、どんな時に発揮されるのですか?」
仲宗根さん「福祉用具専門相談員は、書類の書き方や福祉用具の大まかな選び方を学びます。一方、プランナーは、その人に合わせて『どう使うか』という細かい設定まで考えます。例えば、同じ電動ベッドでも『この機種はこの人には合わないな』というように、深く掘り下げていくのがプランナーの仕事です。日常的に『このお客様には、この車椅子じゃないな』と感じた時、プランナーの研修で学んだ内容を思い出して、用具を選定しています。」
MC久高「車椅子といっても種類がたくさんあって、その人に合ったものがあるんだ!」
仲宗根さん「そうなんです。それを探すのが私たちの仕事です。ドンピシャにはまった時は、『プランナーの勉強をして良かった』と心から思います!」
MC久高「まさに究極の接客業ですね。レンタルして終わりではなく、そこからのお付き合いになりますもんね。」
仲宗根さん「売って貸して終わりではなく、その方の生活を支える道具なので。『この道具を使って公園に行けるようになった』とか、『車椅子に乗ったらお孫さんと遊びに行ける』とか、その先の未来を見据えて用具を選んでいます!」
MC久高「それが『顧客ファースト』に繋がるんですね。実践する上で意識していることは何ですか?」
仲宗根さん「一番は、ご本人の生活はもちろんですが、そのご家族の生活も考えることです。 極端な例ですが、『お母さんが瀬底島に住んでいて、娘さんは北谷で仕事をしている。夕方、お母さんが歩けなくなったけれど、娘さんが家に戻れるのは夜8時です』という状況があったとします。倉庫が開いている6時までなら、私が車椅子を届けることができます。 私自身、父が年を重ねた時に、仕事が抜けられず、父の生活も助けたいけど自分の生活も助けてほしい、と思っていた経験があります。だからこそ、ご本人を取り巻く環境全体が一番良くなるように、私のできる範囲で調整しています。『えこひいき』と言っていましたが、『顧客ファースト』と言うと、ちょっとかっこいいですよね(笑)。」
MC久高「いえいえ、自分のお客さんを『えこひいき』するって、とても素敵です!」
テーマ:これまでの仕事で印象に残っていることについて
MC久高「今までで印象に残っている利用者さんとのエピソードはありますか?」
仲宗根さん「福祉の仕事を始めたばかりの頃、デイサービスで『君、僕の車椅子を持ってきなさい』と、まるでキャバクラの場内指名のような勢いで声をかけてきたおじいちゃんがいました。少し気難しい方でしたが、その方が『ヒージャー(ヤギ汁)が食べたい』と言ったんです。 でも、血圧が高いため食事制限があり、施設では食べられませんでした。
その時、彼が言った『辛いのは食の制限じゃない。人生の制限だ』という言葉が忘れられません。
彼を助けるための介護保険が、彼の人生を制限してしまっているんだと感じました。
でも、その施設の管理者さんが『自分が責任を持つ』と言ってくれて、一緒に飲みに行ったことがあるんです。その方は、普段は車椅子がないと移動できないのに、その日は装具と杖を使って、自分の足でお店に入ってきたんです。『こんな姿で来るのは恥ずかしい』と言って。行く前には、施設のアイロンを借りて4時間くらいかけて準備していました。那覇の『スナック母子家庭』の姉さんが友達で、夕方5時からお店を開けてくれました。最後にお姉さんが『おじい、たまには脱走してから来ないと!』と言った時に、その方が『また脱走してくるさ!』と言ってお別れしました。この一言と笑顔で、私自身の介護に対する意識が変わりましたね。制限はあっても、何かできることはあるはずだと。」
MC久高「この方たちの好きなもの・やりたいこと・食べたいものを制限して止めているって自分に置き換えて考えてみてもすごく嫌だし、辛いね。もしかしたら寿命はもう後先長くないかもしれないって考えているとしたら、やりたいことをやっておきたいですよね。その方にとっては一生の思い出ができたと思う!」
仲宗根さん「そうだったらいいなと思っています!」

テーマ:これからの展望について
インタビュアー小川「お話を伺っていて、すごくパワーあふれる方だなと感じました。ご利用者様からご指名が入るのも分かる気がします。まさに『やりたいことをやって生きる』を実践されていますね。 福祉用具があることで、それがご利用者様の手となり足となり、リハビリを頑張ろうという気持ちになれるのは、すごく素敵なことだなと思ってお話を聞いていました。」
仲宗根さん「ありがとうございます!」
インタビュアー小川「MRTでもオンライン診療を行っていますが、ぜひ福祉もしくは福祉用具との連携という形で、介護や医療の連携をご一緒できたら嬉しいです!」
仲宗根さん「ぜひ。福祉用具が連携に加わることで、リハビリも劇的に進みます。ご自宅でのQOLを一気に上げることができるので、ぜひお手伝いさせていただきたいです。」
MC久高「それでは最後に、千明さんのこれからの展望をお願いします。」
仲宗根さん「私の会社、Walkers Baseは、『前進する人たちの基地』です。私は子供を持たない人生を選んでいるので、将来は『働きたい』という思いを持つ障がいのある方や経営をしたいと考えている方などに、この会社をまるごと渡せるようにしていきたいと思っています。少しでも前に進みたい人たちをたくさん雇用できる会社にすることが目標です!」
MC久高「素敵ですね。超応援しています!」
毎週火曜日18時から19時、
MRT presents OKINAWA FUTURE INNOVATION、次回もお楽しみに!

インタビュアー小川 智也について
MRT株式会社の代表取締役兼、現役医師。
国立病院機構大阪医療センター救命救急センターなどの経験を経て2011年にMRT入社。
MRTは医療人材プラットフォームを展開し、単発非常勤医師紹介では日本最大級のシェアを誇る。
国内初の遠隔診療(オンライン診療)サービスも開始。
MRTサイト:https://medrt.co.jp/



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